N-BOX・N-BOXカスタムの安全装備・安全性能を主に「自動車事故対策機構(NASVA)」が実施している安全性能評価試験から考えてみたいと思います。
「軽自動車は安全性が低いって聞くけどN-BOXはどうなんだろ?」と気になっている方はご覧ください。
公的機関によるN-BOX・N-BOXカスタムの安全性能評価
国土交通省と独立行政法人「自動車事故対策機構(NASVA)」が各車の安全性能試験を実施して結果を公表しています。
試験結果の「自動車アセスメント」と「予防安全アセスメント」からN-BOX・N-BOXカスタムの安全性能を見てみましょう。
自動車アセスメント(衝突安全性)
試験車両について
試験車 |
N-BOX G・Lパッケージ |
発売 | 2011年12月 |
型式 | DBA-JF1 |
排気量 | 658cc |
車両重量 | 930kg |
全長×全幅×全高 | 3,395×1,475×1,770mm |
その他仕様 | 5ドアハッチバック、CVT、FF、4人乗り |
タイヤ | 145/80R13 75S、YOKOHAMA BluEarth A34 |
試験車両重量 | フルラップ:1,138kg オフセット:1,135kg 側面:1,020kg |
総合評価 : ★★★★☆ 157.7点 / 208点
総合点の内訳は「乗員保護性能評価」「歩行者保護性能評価」「PSBR評価」の3つに分かれています。
星の数は4つとなり、残念ながら「JNCAPファイブスター賞」は取れていません。
※総合170点以上で星5つとなり、安全性能総合評価の最高評価として自動車事故対策機構より「JNCAPファイブスター賞」を授与されます。
軽自動車でファイブスター賞を受賞しているのは同じホンダの「N-WGN(178.8点)」のみです。
試験を実施している軽自動車15車種のうちN-BOXは11位となっており、あまり衝突安全性が高いとは言えなさそうです。
とはいえ、一昔前のペラペラの軽自動車に比べたら格段に丈夫になってますけどね・・・。
乗員保護性能評価 : 72.02点 / 100点
乗員保護性能評価は「フルラップ前面衝突試験」「オフセット前面衝突試験」「側面衝突試験」「後面衝突頚部保護性能試験」の4つの試験が実施されています。
フルラップ前面衝突試験
時速55kmでコンクリート壁に正面衝突した時の、ダミー人形の各部(頭部・頚部・胸部・下肢部)が受けた衝撃と、車室内の変形程度を評価する試験です。
参考)ダミー人形は身長175cm、体重78kg(付属物を含めた試験時の質量は約85kg)となっています。
運転席 | レベル3 | 8.35点 |
助手席 | レベル3 | 8.05点 |
レベルは5が最高で、点数は12点満点です。
動画を見た感じだと車体はかなり丈夫だなと感じます。
エンジンルームがかなりコンパクトなので正面衝突の際の運転席へのダメージが気になるところでしたが、Aピラー歪まず、フロントガラス割れず、室内への変形はほぼありません。
ただそれなりにダミー人形に負荷はかかっているようで、乗員保護性能としては運転席、助手席ともにレベル3にとどまっています。
オフセット前面衝突試験
時速64kmで障害物(アルミハニカム)に、運転席側の一部(オーバーラップ率40%)を前面衝突させた際の、運転席と後部座席に乗せたダミー人形の各部(頭部、頚部、胸部、下肢部、腹部(後部座席のみ))が受けた衝撃と室内の変形具合を評価する試験です。
参考)運転席のダミー人形はフルラップ前面衝突試験と同じ。後部座席は大人の女性(身長150cm、体重約49kg(付属物を含めた試験時の質量は約54kg)となっています。
運転席 | レベル4 | 10.44点 |
後部座席 | レベル3 | 8.00点 |
レベルは5が最高で、点数は12点満点です。
普通車に比べて車体が軽いのでオフセット衝突ではさすがに車体が飛び跳ねてますが、Aピラーは無事ですね。
後部座席の女性ダミーの胸部へのダメージが比較的大きいので運転席はレベル4、後部はレベル3となっています。
ただし、
後席ダミーのシートベルトが衝突の影響により、肩から上腕部付近に移動したことで、
胸部傷害値(胸部変位量で評価)が大きくなったおそれがあります
とのこと。
側面衝突試験
静止状態の試験車に質量950kgの台車を時速55kmで運転席側のサイドから衝突させた試験です。
ダミー人形は身長170cm、体重約72kg(付属物を含めた試験時の質量は約78kgの大人の男性を模擬したものとなっっています。
運転席 | レベル5 | 11.23点 |
側面衝突の乗員保護性能はレベル5と最高評価を獲得しています。
サイドエアバッグシステムなしでの試験結果となっていますが、メーカーオプションであんしんパッケージ(61,560円)を装備すれば、運転席と助手席にはi-サイドエアバッグシステム、前席・後座にサイドカーテンエアバッグシステムが付くので頭部や頚部へのダメージはさらに改善されると思われます。
また、車高が高く車重の軽いスーパーハイルーフ軽にもかかわらず側面衝突で転倒しなかったのはすごいですね。もちろん衝突のしかたによっては横転するんでしょうが。
後面衝突頚部保護性能試験
静止中に後ろから衝突された際の首へのダメージを保護する性能試験です。
運転席 | レベル4 | 9.87点 |
助手席 | レベル4 | 9.87点 |
衝突時にはヘッドレストがうまい具合に頚部を保護するようになっていますね。
後方からの衝突には割と強そうです。
頸部衝撃緩和フロントシートが採用されているそうな。
歩行者保護性能評価 : 81.73点 / 100点
万が一、N-BOXで人をはねて、歩行者の頭部と脚部が車体のボンネットとフロントウィンドウに衝突したことを想定し、大人と子供の模擬ダミー人形が頭部と脚部に受ける衝撃を試験しています。
歩行者頭部保護性能 | レベル4 | 3.09点 |
歩行者脚部保護性能 | レベル4 | 4.00点 |
歩行者傷害軽減ボディを採用しているので、全体的にレベルは高めです。
歩行者が車体のどの部分の衝突するかによって変わってくるのですが、N-BOXの場合、フルラップ前面衝突試験やオフセット前面衝突試験の動画を見れば分かるように、Aピラー付近とボンネット付近の強度がかなり強いことがうかがえます。
反面、歩行者をひいてしまった場合は、その部分の強度の強さが歩行者へのダメージを大きくしてしまうようです。
PSBR評価 : レベル 2 / 5 4.0点 / 8点
人が乗車しているにもかかわらずシートベルトを装着せずに走行し始めてしまった場合の警告機能です。
助手席には表示警報、音による警報が両方ともついていますが、後席に関してはついていないためレベル2(4点)となっています。
予防安全性能アセスメント
2015年度の予防安全性能アセスメントにおいて、46点満点中15点を獲得し、先進安全車プラス(ASV+)を獲得しています。
補足1)
2点以上で先進安全車(ASV)、12点以上で先進安全車プラス(ASV+)と認定されます。
補足2)
2016年度の予防安全性能アセスメントより「対歩行者自動ブレーキ」が評価対象となり、71点満点中46点以上で「ASV++」となります。
N-BOXの予防安全性能アセスメント試験結果詳細はこちら(PDF)
対象車両
車台番号がJF1-1800001以降及びJF2-1500001以降で「あんしんパッケージ」と「ナビ装着用スペシャルパッケージ」+ディーラーオプションナビを装着した車両が対象。
予防安全装備 | 装備 | 検出装置 | 確認作動域 | ポイント |
被害軽減ブレーキ | オプション | レーザーレーダー | 10~30km/h | 9.0 / 32.0 |
はみ出し警報 | なし | – | – | – / 8.0 |
後方視界情報 | オプション | カメラ | – | 6.0 / 6.0 |
被害軽減ブレーキ
ブレーキアシストや自動ブレーキと言われる安全装備でN-BOXには「シティブレーキアクティブシステム」という名称で用意されています。
特別仕様車ターボSSパッケージのみ標準装備、他グレードはメーカーオプション。
ただし、ホンダの安全運転支援システム「Honda SENSING(ホンダセンシング)」に搭載されているプリクラッシュセーフティシステム「衝突軽減ブレーキ〈CMBS〉」とは違いますのでご注意。
「シティブレーキアクティブシステム」は、あくまで時速10~30km程度の低速で前方の車両との衝突を自動ブレーキによって回避・軽減する機能です。
「シティブレーキアクティブシステム」作動動画(時速20km)
「シティブレーキアクティブシステム」作動動画(時速30km)
車線はみ出し警報
ホンダセンシングに搭載されている、車線からはみ出さないようにステアリングや警報によって制御する「LKAS〈車線維持支援システム〉」「路外逸脱抑制機能」です。
N-BOXには装備されていないので0点となっています。
後方視界情報
バック時の後方視界の視認性の良さや死角などを試験した評価です。
N-BOXのディーラーオプションナビのバックカメラはノーマルビュー、ワイドビュー、トップダウンビューを切り替えることができる上、ノーマルビューでも非常に視認性が良く視野も広いです。
よって評価点は満点の6.0点となっています。
その他の主要な安全装備
予防安全装備
エマージェンシーストップシグナル
走行中の急ブレーキを感知すると、ブレーキランプに加えてハザードランプも自動で点滅し、後続車に注意を促してくれます。
VSA (ABS + TCS + 横すべり抑制)
急な割り込みや障害物を避けるために急ハンドルを切った際に車体が不安定になってスリップするなどの動きを抑制する機能です。
衝突安全装備
i-SRSエアバッグシステム(連続容量変化タイプ)
様々な体格や衝突状況に対応できるより早くより長くより優しく膨らむエアバッグを独自で開発しています。
従来のエアバッグのように直線的に膨らむのではなく、縫製が渦巻き状になっており、円の外側に向かって膨らむのでドライバーへの衝撃を緩和できるようになっています。
まとめ
予想以上に安全性は高そうだというのが個人的な感想です。
特に衝突時の室内・ダミー人形へのダメージがかなり抑えられていて、軽自動車は走る棺桶などと揶揄されていたのが遠い昔のように感じられます。
とはいえ、予防安全性能に関してはまだまだと言った印象です。
メーカーオプションのあんしんパッケージを付けることで「シティブレーキアクティブシステム」が付いてきますが、付けない場合は予防安全性能はほぼゼロになります。
せめてあんしんパッケージは全グレード標準装備にしてほしいところです。
2017年12月頃と予想されているフルモデルチェンジではホンダセンシングが搭載されるのでは?と言われているので、モデルチェンジに期待が膨らむところですね。
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