ホンダ・N-BOXの試乗をしてきました。
エンジン性能や走行性能、運転のしやすさ(取り回しや車庫入れのしやすさ、視界の良さ等)、乗り心地や走行時の静音性などを、街中の一般道、高速道路、山道(ワインディング)とそれぞれのシチュエーションで調査してきました。
試乗車について
試乗車はN-BOXのターボ無しノーマルタイプのG Lパッケージです。
メーカー | ホンダ |
車名 | N BOX |
グレード | G Lパッケージ |
型式 | DBA-JF1 |
年式 | 平成28年8月 |
エンジン性能は以下のような感じとなっています。
エンジン型式/種類 シリンダー数及び配置 |
S07A/水冷直列3気筒横置 |
弁機構 | DOHC チェーン駆動 吸気2 排気 |
総排気量(L) | 0.658 |
内径×行程(mm) | 64.0×68.2 |
圧縮比 | 11.8 |
燃料供給装置形式 | 電子制御燃料噴射式(ホンダPGM-F1) |
使用燃料種類 | 無鉛レギュラーガソリン |
燃料タンク容量(L) | 35 |
最高出力 | 43kW[58PS]/7,300rpm |
最大トルク | 65N・m[6.6kgf・m]/4,700rpm |
燃費(JC08) | 25.6km/L |
0-100加速 | 14.5秒 |
では行ってみましょう!
走行性能・乗り心地はどう?
一般道・街乗り
恐らく使用頻度としては一番多いであろう一般道・市街地での走りですが、信号待ちからの発進時の加速など、特にパワー不足を感じることはなく快適に走ることができました。
ストップアンドゴーが多い街中での走りだとエンジン性能は馬力よりもトルクが重要になってきます。
その点、N-BOXのエンジンの最大トルクは65N・m(6.6kg・m)/4,700rpmとなっており、実用回転域(2500~5000rpm)で最大トルクが発揮できるようになっています。
ライバル車であるタントは、60N・m(6.1kg・m)/5,200rpmなので、2,000~3,000回転での使用が多い街中での走りだとNBOXに軍配が上がります。
(ただその分、燃費性能だとタントの勝ちです。)
視界の良さは素晴らしい
フロントガラス、左右のフロントピラーのガラスも大きく視界が広く、右左折時にもAピラーが視界を遮りにくくなっています。
運転席の座席からの視点も高いので、非常に視界は良く車両感覚もつかみやすいです。
フリード・ステップワゴンなどのミニバンに乗っている感覚に非常に近いですね。
また左のピラーには「サイドビューサポートミラー」という補助ミラーが2個ついており左前方のタイヤ前あたりと、死角となる助手席ドアの下あたりが見えるようになっています。
狭い道で対向車とすれ違うときや路肩に停車するときなどに、車両感覚に頼らずにしっかりと目視で確認しながら左に幅寄せできるようになっています。
足回り・乗り心地は少しかため
足回りは固めで路面の凹凸による突き上げはダイレクトに伝わる感じです。
前席・後席ともに上下動(ピッチング)は大きめです。
まあ軽だしここらへんは仕方ないかなという印象。
N-BOXのホイールベースは2,520mmで、スズキのスペーシアが2,425mm、ダイハツのタントが2,455mmなので、ホイールベースはNBOXが一番長いのでピッチングも一番マシなのかな~?と思ったりもしますが、乗り心地は似たり寄ったりという印象。
長距離ドライブだとちょっと疲れるかもしれませんが、街中で少し走る分にはそこまで気になりません。
アイドリングストップがちょっと気になる
気になったのがアイドリングストップ。
ブレーキから足を少し離すとエンジンがかかりますが、そのときの振動がなかなか大きい上にクリープが大きく、エンジンがかかった瞬間にクイッと少しだけ車が前に動くことがあります。
なので、これを避けようとすると、あまりパッとブレーキから足を離さす徐々に離していってエンジンがかかってから、足を完全に離してアクセルへ移動するというような繊細な動き(笑)が必要になります。
また右折時などに低速でノロノロ前に進んだりするときも、あまりブレーキを踏みすぎるとエンジンが停止しては始動してみたいなことになります。
停止時にも車が完全に停止したタイミングではなく、ブレーキの踏み込み量によってエンジンが停止する感じなので、停止直前にブレーキを抜いてふわっと停止しようとすると、エンジンが始動してしまうこともあります。
こんな感じでアイドリングストップの挙動にはちょっと慣れが必要です。
ECONスイッチをオフにすればアイドリングストップをお好みでオフにすることも可能。
(ECONをオフにすると燃費性能が落ちるので注意。)
ブレーキングは好感触
ブレーキは軽自動車の割には軽すぎず適度な遊びがありなかなかいい感じだと思います。
軽の中にはブレーキをちょっと踏んだだけでキュッと効き過ぎてスムーズに停車するのが難しい車種もありますが、NBOXの場合は適度な重さがあるので、そこまで気を遣わずともスムーズなブレーキングができるようになっています。
コーナリング・ハンドリングもスムーズ
NBOXのハンドルは軽すぎるという口コミも多いようですが、私は適度な重さがあり扱いやすい印象を受けました。
確かに軽いんだけど、ハンドルを動かした分だけダイレクトにタイヤに伝わる感じがありスムーズな回し心地。
コーナリング時に横に揺られる感じ(ロール)も強いけど、スーパーハイトワゴンの軽の中ではかなりマシな方だと思われます。
静粛性は軽にしては良いか
セダンやコンパクトカーなんかと比較してしまうと、ロードノイズも拾うし、坂道を登るときや速度を出そうとするとエンジン回転数も上がっていって「ブオー」というエンジン音もかなりうるさくなります。
ですが、従来の軽自動車と比べると格段に静かです。
60km/h出してもエンジン回転数は2,000rpm程度なのも静音性の高さに一躍買っていますね。
街中で役立つ装備
ヒルスタートアシスト機能
坂道での発進時にブレーキからアクセルへ踏み換える瞬間に車が後退するのを防いでくれます。
アイドリングストップ機能のオン・オフ関係なく動作します。
(全車標準装備)
高速道路
高速道路での走行性能や乗り心地をシチュエーション別に書いてみました。
あくまで私が感じたものなので個人差はあるものと考えてください。
合流時の加速
合流前の坂道でアクセルを踏み込むとエンジン回転数はだいたい4000~5000rpmくらいまで上がっていき、エンジン音が「ブオーーーーー!!」に加えて「キイイイイーーン!!」という高音も出てきます。
風切り音とロードノイズも相まってなかなかのうるささとなります。
そこまで頑張ってなんとか100km/hいくかどうかという感じで合流です。
N-BOXのエンジンはかなり頑張っている方だとは思いますが、どうしても660ccの成約がある軽の自然吸気エンジンではパワー不足は否めません。
ターボが付くとまた違うのでしょうが、ターボは未試乗なのでまたの機会に。
高速巡航時の直進安定性
だいたい80~100km/hで走行してきましたが、直進安定性はなかなかのものです。
ハンドルもズシッとしてがたつきやふらつきなどもなく、「なんだか怖い」という感覚を持つことなく高速巡航ができました。
エンジン回転数は3,000rpmくらいだったと思います。
(ちゃんとチェックするの忘れちゃいました。すいません。でも速度の割に回転数少ないなと思った記憶があります。)
追い越し時の加速
追い越し車線で120km/hまで加速してみました。
さすがにちょっと恐怖を感じるくらいになりましたが、安定性は変わらずでがたつきやふらつきもありません。
エンジンは4,000回転ちょっとだったと思います。
ただやはりターボがないと高速での追い越し加速は厳しいですね。
ちゃんと追い越すまでけっこう時間がかかりました。
高速での車線変更やコーナリング時の安定性
N-BOXは比較的重心が低いとはいえ、スーパーハイルーフ軽ということで車高が高い上に車重は軽いので横風には非常に弱いです。
高速走行中に橋などにさしかかり強い横風に煽られたり、横を大きなトラックなどが追い越ししていくと、かなりハンドルを取られるのでスリル満点です。
コーナリング時もロールが強めで安定感が良いとは言えません。
ただまあそれほどスピードを出してコーナーに突入しなければ大丈夫でしょう。
普通に乗る分には問題ないレベルです。
高速道路での乗り心地・静粛性は?
高速道路を走ったときの音声を録音してきましたので高速での静音性の確認に役立ててください。
0:04~ ピーという音はETCゲートを通過した音です。
0:25~ 合流前の直進坂で加速し始めています。
0:38~ ピッピッピという音はウィンカーです。合流しました。
80km/hくらいで巡航中
0:57~ 追い越しのため追い越し車線へ
1:15~ 追い越し完了。走行車線へ
2:25~2:56 トンネル
音声を聞いてもらえれば分かりますが、ロードノイズ・風切り音がけっこう入ってくるので静かとは言えません。
エンジン音は時速80km程度で走行車線を走っている程度だとそこまで気にならない程度です。
ですが、合流のための上り坂の加速時や追い越し時の加速時にアクセルを踏み込むとエンジン回転数が上がるためエンジン音もそこそこうるさくなります。
高速道路は舗装がきれいですしうねりもそれほどないので乗り心地は悪くありません。
山道(ワインディング)
こちらは動画を撮ってきましたのでよろしければご覧ください。
登りでのパワーは?
動画を見てもらえば分かりますが、登りになるとエンジンの回転数が上がって「ブオーー!」って言ってます。
とはいえ、登坂車線を走らないと後ろから煽られるようなほどパワー不足ではありません(笑)
アクセルを踏み込めば上り坂でもエンジン音は大きいもののきちんと加速してくれます。
ただまあ山道をよく走るような方はターボ付きにしておいた方がストレスが少なくて済むかもしれません。
コーナリングの安定性
これも動画を見てもらえば分かりますが、コーナーではかなり減速しています。
これ、けっこう減速しないとなんだか怖いんですよね。
ターボ付きになるとフロントサスペンションにスタビライザーバーを装備しているのでコーナーでのロールは抑え気味になるそうな。
今回の試乗はノーマルだったからかワインディングでのコーナリングには若干不安を感じました。
まあそれも峠を攻めるような走りをしない限り問題ないですけどね。
山道での乗り心地・静粛性は?
アップダウンが多くなるとそのたびにアクセルを踏み込んでエンジン音は大きくなりますし、ピッチングやロールが大きめなので、特に後席は上下左右に振られることが多く、乗り心地はあまり良くはありません。
子供を乗せていたりすると丁寧にゆっくり走ってあげないと車酔いしちゃうかもしれません。
運転のしやすさはどう?
視界・取り回しのしやすさ
フロントガラスはAピラーについているサイドガラスも含めて上下左右に大きく広がっており、死角も少なく非常に視界は良いです。
またライバル車であるタントやスペーシアと比較しても運転席の着座位置が一番高いのでアイポイントが高くなり視野が広がり、車両感覚もつかみやすくなります。
最小回転半径は、N-BOX・N-BOXカスタムともに4.5m(4WDは4.7m)となっていて、タント・タントカスタム、スペーシアの4.4mに比べると少し小回り性能では負けています。
とはいえ取り回しのしやすさはさすがに軽です。
細い道や狭い駐車場等でもスイスイと小回りがききます。
駐車場(車庫入れ)
駐車場などでの車庫入れにはピタ駐ミラーという補助ミラーが用意されており、車庫入れが苦手という方でもすぐに慣れることができるようになっています。
ピタ駐ミラー
サイドビューサポートミラー
最初の方にも紹介しましたが、車体の左前方と助手席ドアの下あたりを見ることのできるミラーです。
広角ドアミラー
ドアミラーの下3分の2あたりに黒い線が入っているのが見えますか?
この線より下の部分は広角ミラーになっていて、通常のミラーよりも見える場所が大きくなっています。
この写真からだと分かりにくいですが、後ろのタイヤまでミラーで見えるようになっています。
後方視角支援ミラー
運転席からは死角になる車の真後ろ下を映してくれるミラーです。
狭い駐車場などで自転車やバイクなどの障害物に当たらないように駐車したり、車止めがないような駐車場でも安心してバックできます。
バックモニター
標準装備ではなくオプションになりますが、試乗車にはディーラーオプションのバックモニターが付いていたので一応、紹介しておきます。
リアワイドカメラシステムといって3万円近くしますが、ノーマルビュー、ワイドビュー、トップダウンビューの3種類のビューを切り替えることができます。
まとめ
今回、2時間ほどN-BOXに乗ってあちこち走ってみたのですが、全体として非常に良くできた軽自動車だという印象でした。
4人家族以下のファミリーユースで3列シートが不要なら、ヘタなミニバンを買うよりも燃費も良く税金などの維持費も安いN-BOXの方が賢い選択になるやもしれません。
それくらいミニバンの利便性と軽自動車のコスパを両立している車種と言えます。
街乗りに力を入れたエンジン設計のため、高速道路や山道だと若干のパワー不足を感じますが、それもターボ付きにすればほぼ解消できるでしょう。
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